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構造計算書の偽装発覚問題が大きな社会問題となっています。偽造計算書を申請した設計者、それを強要したゼネコンやデベロッパー、また偽造を見抜けなかった審査機関、その審査機関を監督する行政、皆それぞれに責任があります。
そもそも確認申請や構造計算とはいったいどういったものなのかについて、今回は検証してみます。
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■建築基準法に基づいた設計と建築主の本音
昭和25年に建築基準法が制定され建築物についての構造やその他の規制が定められました。以後、建築物を建てる際には、一定の資格を持った設計者が建築基準法に基づいた設計をし、その設計図書を各市町村の行政庁に申請をすることが義務付けられました。これを建築確認申請とよびます。この確認申請図書を行政庁の一般には建築課と呼ばれる部署において基準法その他の法令、条例に則しているか1件、1件チェックし、法に適合していれば確認済み書という書面を発行します。この確認済み書がなければ建築工事に着手することはできません。(増築でも床面積が10uを超えると必要になります)
この審査の期間は原則として2階建て以下の木造であれば7日以内、木造3階以上や非木造建築物、特殊建築物等では21日以内と定められています。
しかし、提出書類に不備や疑義がある場合には審査を中断し、設計者に文書にて中断理由を報告します。この中断を受けた設計者は行政庁に出向き訂正をしたのち、再度、審査を受けることとなります。この間、確認済みがおりる期間が延びますので、建築する側としては1日でも早く着工するためにも、この審査の期間を少しでも短くしたいのが本音です。
この建築確認申請が設計士のひとつの山場であり、確認済みがおりると一息つけたものです。
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■確認申請に必要な書類と構造計算書について
確認申請に必要な書類は建物の構造や規模によって異なります。
通常の2階建て程度の木造住宅であれば申請書、設計図面(案内図、配置図、各階平面図、2面以上の立面図程度)ですが、非木造(鉄骨造や、鉄筋コンクリート造)や木造でも3階建てになりますと問題の構造計算書が必要となります。
構造計算書とは建物が自重(建物そのものの重量)及び積載荷重(家具などの床に載る荷重)、積雪荷重、風荷重及び地震荷重その他土圧、水圧、衝撃などの外力に対して安全を確認するために計算された書類です。基本的には外力を柱や梁など、それぞれの部材に対して計算し、部材の許容応力度に収まるように部材の断面寸法や鉄筋の量を決めていく計算作業となります。
今回、問題が発覚した建物は鉄筋コンクリートです。建物の構造は文字通り鉄筋とそれを覆うコンクリートによって構成されています。コンクリートは圧縮力に強く鉄筋は曲げ力や引張り力に抵抗するため、この両者を組み合わせて造る構造はそれぞれが一体となって外力に抵抗します。今回はこの内部の鉄筋の数が大幅に間引きされていました。このため地震時のときのせん断力に耐えられなくなり崩壊の恐れがあるというわけです。
この計算書はかなりのボリュームになるため端から端までを限られた時間の中でチェックするのは至難といえます。また、構造に精通した人でなければチェックすらできません。
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■行政から民間へ、その問題点
今回、民間の検査機関による偽造計算書の見落としが多く発覚しています。
確認申請の審査は当初、行政が行っておりましたが、1999年よりそれが民間にも開放されるようになりました。民間は営利であるため1件あたりの審査時間を短くし、より多くの案件をこなしたほうが利益増につながります。このため行政の審査に比べ審査が甘いことは否めません。一方、申請する設計者も厳格な審査をする行政よりも、早く確認をおろす民間機関に申請を出すようになり、現在では半分以上の確認申請が民間の審査機関に流れています。また民間の中でもより審査が甘く、早く確認をおろすところに申請依頼が集中してきているのが現状です。当初、確認検査の民間開放に国交省が及び腰だったのもこの現状ではうなずけます。
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今回の問題で現状の確認検査のあり方が見直され、今後の確認検査に一定以上のレベルが設けられることが必須となることでしょう。
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